COLUMN

訪ねてみたい旧街道 10

 昔から道があるところには、人と文化の交流が育まれてきました。太平洋新国土軸を構成する18府県には、今も数多くの旧街道が残り、交流の歴史を今に伝えてくれています。今回は、別所街道です。

別所街道(愛知県豊橋市…東栄町)
 別所街道は、愛知県豊橋市から東栄町(昔の別所)までを結ぶ道です。幅がわずか2〜3mほどの細い里道をつなぎ合わせ、明治になって県道に指定された道です。数ある街道の中では比較的“若い”といわれる別所街道ですが、もともとこの街道は、別所を越えて長野県飯田市まで続く道で、道沿いの市町村に残る昔話を辿っていくと平安時代にまでさかのぼります。中でも、東栄町の峠には、戦国時代に武田信玄の家臣がお地蔵さんに斬りつけていったなど、古くからの言い伝えが残されているそうです。
 時代が経ち、難所として知られた峠もやがて石畳に、そして大正時代にはトンネルへと姿を変えるにつれ、旧街道の峠を訪れる人も減ってきたそうです。それでも、森林の手入れをする人が出入りすることがあるためか、今もお地蔵さんの前にはお供え物が絶えないそうです。
 「街道の歴史は、ふるさとの歴史そのもの」。岡崎市に住み、県内のさまざまな街道の歴史を調べた住民の方はそうおっしゃいます。国土交通省の名四国道工事事務所でも、地域の専門家を招いた市民講座で別所街道をとりあげました。新たなまちづくり、道づくりの参考にと願って、街道の歴史を探る人がいれば、今もなお、お地蔵さまにお供えをする人がいる。様々な人に愛されてきた街道は、21世紀に生きる私たちに、道が本来持っていた温かみを教えてくれるようです。

街道の起点・吉田城の風景
街道の起点・吉田城(豊橋市)
別所街道の地図 スターフォレスト御園の写真
「星のふるさと」
とも呼ばれる東栄町
(スターフォレスト御園)



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