ROKECHI TANBOU

映画 雨あがる
掛川城の写真

晴々とした気持ちになる風景
 静岡県掛川市のシンボル、掛川城の御殿は、日本に現存する数少ない城郭御殿の一つです。今回の舞台は、山本周五郎の作品「雨あがる」の撮影が行われた静岡県掛川市です。
 「見終わって、晴々とした気持ちになる様な作品にすること」。故黒澤明監督が、最後まで映画化に向けて脚本づくりに取り組んでいたこの作品を、監督の覚え書きどおり、さわやかな作品に仕上げたのは、黒澤監督ゆかりのスタッフと映画のロケ地で支援を惜しまなかった地域の人々です。
 作品は掛川城のほか、大井川や伊豆などで撮影されました。掛川城は、この作品以外にも多くの時代劇などのロケを行っているそうです。掛川市役所で当時、ロケの支援を担当された岡本係長にお話をお伺いしました。「お城が消防署、女学校、役場として使い続けられてきたから生きた表情が出るのでしょう。お城は掛川の誇りです」。
掛川城二の丸御殿の写真 掛川城二の丸御殿


映画を支えるエキストラ
 この作品が、地域の人々の支援によって作られているというには、2つの理由があります。1つは、地元の市役所等が横の連携を図り、受け入れ体制を築いているため。そして2つめは、エキストラとして地域の人々の多くの出演ですばらしい作品ができあがっているためです。中でも、大井川の渡しのシーンでは、大井川蓮台保存会の人々や島田市と掛川市の人々、大学の映画研究サークルなど100人以上の人々が「川越人足」として出演しています。
 もう一つ、地域のエキストラが出演しているのが御前試合のシーンです。実は、ここに並ぶ35名のりっぱな藩士たちは、掛川市役所の職員です。岡本係長もちょんまげに裃をつけ、スクリーンの中で、ほほえんでいます。「俳優さんたちは気さくでしたし、面白い体験でしたね。」御殿内に展示された数多くの写真が、ロケ時のほのぼのとした雰囲気を伝えてくれています。
岡本係長の写真 岡本係長


映画の効果とまちづくり
 映画のロケが地域振興にいかに結びつくのか。掛川市では、マスコミや広報を通じた宣伝により、観光客が増えたそうです。また、掛川城のポスターにも「雨あがる」のロケ地となったことを記述し、映画を活用した観光PRを行っています。掛川城には、2001年5月にロケが行われた加藤剛主演の映画「伊能忠敬」のチラシが張ってありました。
御殿内の展示の写真 御殿内の展示


映画ロケから学ぶ
 全国でもいち早く生涯学習のまちづくりに取り組んだことで有名な掛川市。何にでも疑問を持ち、学ぶ機会を設けています。市役所内のむき出しになっているエレベーターを指さし、岡本係長も「どうやって動いているのか、仕組みが分かるでしょう」。
 たくさんの映画で映し出される掛川。ロケのたびに、様々な疑問を持ち、何かを学んでいこうという気概に満ちあふれています。




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