ROKECHI TANBOU

映画 ホタル
・・・鹿児島県・知覧町・・・
ホタル

 「ホタル」は、生き残った元特攻隊員とその妻(高倉健、田中裕子)を通して、観る人に特攻の人たちの思い、相手を思いやる夫婦の愛情などを伝える映画です。

●知覧特攻平和会館●
 知覧は終戦間際、沖縄に最も近い飛行場という理由で特攻基地となりました。1,306名の特攻戦没者のうち半数近くが知覧から飛び立ち、還らぬ人となりました。

特攻平和会館 特攻平和会館

 特攻平和会館には、特攻戦没者の遺品・遺書、戦闘機等が展示され、出撃前夜の特攻の人たちの様子を証言するビデオも放映されています。
 「ホタル」が平成13年夏に上映されて以来、訪れる人が急増したそうです。観光バスを降りてきたグループの賑やかな話声もやがて静かになり、鼻をすする音に変わっていきました。玄関前の庭にある「ホタル」の石碑の除幕式には、主演の高倉健さん、監督の降旗康雄さんも出席したとのこと。裏にひっそりと名前が刻まれているあたりに、健さんらしさが漂います。

「ホタル」の石碑の写真 「ホタル」の石碑

●富屋食堂●
 映画のタイトル「ホタル」は、とても印象深いシーンをもとにつけられています。・・・出撃の前夜、「ホタルになって帰ってくる」と言って去った若者。翌晩、若者が出撃した後、みんなが集まる富屋食堂に一匹のホタルが・・・。
 富屋食堂は、特攻の母と慕われた鳥浜トメさんの食堂で、特攻隊員たちの心の拠り所となっていました。
 平成13年10月にホタル資料館として復元された富屋食堂は、約1年後に入館者数10万人を突破。「地元新聞が“33坪の奇跡”って取り上げてねぇ」と、まちの人は嬉しそうに話して下さいました。

富屋食堂の写真 富屋食堂

 「若い人にこそ、来て、感じてもらいたいですね」と富屋食堂の方。入口近くには、東京から来た修学旅行生の「涙、涙で書きました」という思いが綴られた文集が置いてありました。

●武家屋敷と平和とホタル●
  知覧町は、古くから「薩摩の小京都」と呼ばれ、江戸時代中期の武家屋敷のたたずまいを残すまちです。
 最近は、映画の影響もあって若い人も増えた知覧ですが、ここを訪ねる戦争体験者の方も数多くいらっしゃいます。そういう方々と接することも多いからでしょうか、まちの人たちはみんなトメさんのように優しく、あたたかく迎えてくれました。

武家屋敷通りの風景 武家屋敷通り

 毎年8月15日には、スピーチコンテストを開催して平和への熱いメッセージを送り続けている知覧。世代や性別を越えて、みんなの思いを一つにすることができるまちです。

 映画「ホタル」は、知覧のまちにもう一つ、新たな魅力を付け加えることになりました。ロケ地が観光名所になり、特産品の知覧茶や食べ物にも「ホタル」と名付けられたものがずらりと並んでいます。
 自宅に帰って、お土産に買った香り高い知覧茶を飲みながら再上映。ストーリーを支える鹿児島各地の風景を見ながら、知覧で出会ったたくさんの「トメさん」を思い浮かべました。
 歴史を知ることにより、今を大切に生きなければならないと感じさせてくれる映画の舞台でした。


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