ロケ地探訪

残していきたい歌がある
残していきたい想いがある

映画 「長崎ぶらぶら節」
長崎県長崎市

長崎ぶらぶら節
古い民謡を探して長崎の町を歩き回る男女。
「よか時に、よか人と出会った・・・」
長崎弁の響きが心地よいやさしい作品です。


■長崎の古き民謡を探す旅
 大正から昭和にかけて長崎の花街・丸山で活躍した芸者、愛八を主人公にした「長崎ぶらぶら節」。原作者のなかにし礼さんは、この小説で直木賞を受賞しました。これまでにも吉永小百合さん・渡哲也さん主演で映画化されたほか、テレビドラマや舞台でも取り上げられてきました。
 ストーリーは姉御肌で正直者、面倒見の良い愛八が歴史研究家の古賀と出会い、二人で埋もれている長崎の古い歌を探しに長崎を歩き回り、純粋な愛を紡いでいくといったもの。吉永小百合さん演じる愛八の粋な芸に魅せられ、貧しい少女に無心で手をさしのべる姿に惹かれ、「うち(わたし)」、「おうち(あなた)」と使われる長崎弁に心暖められ、見終わると長崎弁を聞きに旅に出かけたくなる、そんなすてきな作品です。

眼鏡橋の写真眼鏡橋

■丸山の町並み
 愛八が暮らした丸山町は、長崎の繁華街・思案橋の先にあります。昔の風情が残る細い路地にの先にかつて日本三大花街として知られた丸山町があります。映画に出てくる料亭「花月」は、当時丸山一の栄華を誇った引田屋の建物で、司馬遼太郎「龍馬がゆく」にも登場したところです。坂本龍馬が傷つけたとされる柱が残っており、全国から龍馬ファンが訪れると言います。
 映画で有名になったこともあって、丸山町の自治会では自分たちでつくった案内板や写真を道に掲示しています。映画の世界に浸ってまち歩きを堪能できるように、と設置された手づくり案内板が優しく迎えてくれます。

■「長崎ぶらぶら節」
 「長崎ぶらぶら節」は、江戸末期につくられたお座敷歌です。大正に入るとあまり歌われなくなり、古賀は「長崎で生きて死んだ人間の記録、残しとこうと想うて」と歌探しを始めます。川を上り、山を越え、小浜温泉に老女を訪ねる愛八と古賀。
 眼鏡橋やオランダ坂、長崎くんちに精霊流しなど、長崎の風情が次々と映し出されます。
 映画の撮影では、エキストラ役の市民のみなさん1,000人以上が集まって、諏訪神社で「長崎くんち」が再現され、本番のくんち以上に盛り上がりをみせたそうです。
 「長崎ぶらぶら節」の歌詞に『遊びに行くなら花月か中の茶屋』と謡われている中の茶屋は、丸山最高のお茶屋として知られたところ。
江戸中期の庭園が有名で、長崎市の史跡にも指定されていましたが、再び清水崑さんの展示館としてオープンし、にぎわいを生むところとなっています。

オランダ坂の写真 中の茶屋の写真
オランダ坂 中の茶屋

■誰かが残してゆかなくては
 「一銭にもならん、名誉にもならん」けれど、「残していかなければ」と古賀が力を注いだ伝統芸能の収集。映画をきっかけに、長崎市民の間では「ぶらぶら節」に踊りをつけようという活動が始まり、ついには上海で行われた観光フェスティバルに出かけて行くまでに。
 映画「長崎ぶらぶら節」は、見終わった時に、人の心の強さと優しさを考えさせられる物語です。今の時代、これほどゆったりした映画の舞台をつくり出すことができる長崎。そこは、古い文化を大切にして、新しい文化を生み出す力に変えていく優しい人たちの町でした。



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